引用先の『Web魚拓のURL』は出典表示としてOK‥‥?の疑問に答えてみる
はてなで著作権といえばパクリ征伐で一世を風靡した鈴木こあらさん!最近よく見かける、炎上ブログへの言及で『引用先の出典にWeb魚拓を使う事』に疑問を呈していました。
あんなサイトに被リンクなんて送りたくない!という感情はよくわかるんだけど出典や引用元をWeb魚拓先のURLにするというのは実際のところ著作権的にはアウトな気がするんだけどどうなんだろうか?
— 鈴木こあら (@suzukidesu_com) 2016年10月25日
もちろん元記事が消されている場合もあったりするからというのもあるだろうけどその場合は除いて
呼ばれてないのに勝手に解説してみます(笑)そういう事じゃないよ!って場合はご指摘下さい。あと、法的な部分で意見がある方はぜひ突っ込んでください。ゼミみたいで面白いので。
私の結論は『望ましくないが、直ちに違法とまでは言えない』です。
考えと方しては次の通りです。
どんな問題か
まず、この問題は著作権法上の『引用』(32条)における『出所の明示』(42条)に『Web魚拓先のURL』が認められるかという問題です。
(引用)
第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
(出所の明示)
第四十八条 次の各号に掲げる場合には、当該各号に規定する著作物の出所を、その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、明示しなければならない。
一 第三十二条、(略)の規定により著作物を複製する場合二 (略)
三 第三十二条の規定により著作物を複製以外の方法により利用する場合又は(略)の規定により著作物を利用する場合において、その出所を明示する慣行があるとき。
2 前項の出所の明示に当たつては、これに伴い著作者名が明らかになる場合及び当該著作物が無名のものである場合を除き、当該著作物につき表示されている著作者名を示さなければならない。
出所の明示の定義
『出所の明示』というのはは、一般用語としての『出典』と微妙に違い『著作権者名(権利者名)』の表示が原則です。(※この部分で著作者と記載していましたが著作権者(権利者名)と訂正しました。『著作者』とは限りませんのでご注意ください。)
例外として、その表示によって『権利者が明らかになる』場合や、『無名(匿名)の著作物』では、著作権者以外の表示でも認められています。(48条2)
ですから著作権者(権利者)が表示されていればリンクはそもそも必須ではありません。
直接リンクURLのみの場合
それを前提にした上で、出典と称して直接リンクURLのみが表示されていた場合はどうでしょうか?
- 直接権利者の表記はないものの、クリック先に権利者表記があるので、42条2における『権利者が明らかになる』表示であると考える事も可能なように見える。
- また、ネット上の慣行としてクリック可能なURLによる表示は『合理的と認められる方法』(48条1)と考える事もできる。
直接リンクなら認められる可能性は高いと考えます。ただし著作者名の明記よりは明らかに一段劣り、クリックという能動的動作を必要とする事から、表示としては不十分と判断される可能性もありそうです。
ウェブ魚拓のリンクURLのみの場合
そして、本来の疑問である、Web魚拓のリンクURLのみの場合はどうか?
これは直接リンクとの比較で考えます。
- URLが間接的でわかりにくい。
- Web魚拓のコンテンツの一部のように見える。
- また、ネット上の慣行としてWeb魚拓のURLによる表示が、権利者の表示として広く認められているとは言えない。
これらの点で、直リンク以上に明示性は劣ります。しかしながら直接リンクとの違いはわずかであり、直接リンクでの表示が認められるならウェブ魚拓での表示も認められる可能性はゼロではないと考えます。
結論
以上から、『ウェブ魚拓のURLのみ』による引用先の出所の明示は『望ましくはないが、直ちに違法とまでは言えない』と考えます。
そもそもですが、批判先サイトに被リンクを送りたくないが引用したい場合は、単にそのサイトの著作権者名(と、できればサイト名)を明記しておけば、別段リンクを張る必要はありません。
リンクを張るのはネット上のマナーではありますが著作権法上は必須でありません。
ウェブ魚拓について
また、ウェブ魚拓自体は『引用の仲介』サービスと記載していますが、ウェブ魚拓自体が引用の要件を満たしているわけでなく、Googleなどの検索サービスのキャッシュと同じ立場のようです。(著作権法第47条の6)
収集禁止の表示をしているサイトや、権利者からの申し立てがあるものは取集しないという立場です。
『引用における権利者表示の対象』としてはあまり適当ではないとは言え、サイト消滅や改変時の参考資料としては非常に有用であり利用自体には特段の問題はないと考えています。
自分の理解の範囲で書いているので、参考になる判例などあれば教えていただけると助かります♪
追記:ツッコミありました!(訂正)
ブコメで id:nakex1 さんよりナイスなツッコミを頂きました!ありがとうございます!
引用先の『Web魚拓のURL』は出典表示としてOK‥‥?の疑問に答えてみる - kato_19の雑記
- [著作権]
氏名表示権は著作者名でいいけど,出所の明示は言葉の意味通り「誰」ではなく「どこ」の明示であって,著作者名は付随情報では(だから出所の明示に「伴い」明らかになる場合は省略できる)。記事名やURLが主では。
2016/10/26 12:25
文字数の関係もあって門外漢の方には『なんじゃ?』って感じかと思うので、私の理解の確認も兼ねて、僭越ながら一般向けに翻訳させていただきます。
- 引用における『出所の明示の定義』の所は、『著作者名』って書いてあったけど『著作権者(権利者)』にするべきじゃない?
- 出所の明示は権利の所在を示すんだから。権利が著作者にあるとは限らないよね。著作権は譲渡できるし法人が持ってる場合もあるんだから。
- 著作者人格権における氏名表示権(19条)という意味では、著作者名の表示で良いわけだけど、それは付随情報だよね。
- それに氏名表示権は『著作者が創作者であることを主張する利益を害するおそれがない』場合は省略できるので(19条3)出所の明示で明らかになる場合は省略できるしね。
- むしろ記事名やURLの方が優先されるべきじゃないかな。
- (補足)ちなみに著作者人格権というのは、著作権とは別個の著作者固有の権利で、譲渡は不可能と考えられています。だから著作権譲渡の契約では『著作者人格権は行使しない』という条文が入る事があるんですよ。
以上。どうでしょう、この認識でよろしいでしょうか? id:nakex1 さん。再ツッコミや所感はコメント欄などご利用ください!
それにしても、ツッコミいただいて助かりました。うっかり『著作権者』と『著作者』が混在した部分があって、誤解させてしまうところでした。
当該部分は訂正させていただきました。ちゃんと推敲しないとね・・・他にもツッコミや持論があればどうぞ♪
参考
私のアニメブログの記事です(宣伝)かなり詳しく書いているので、具体的な引用方法に関心のある方はどうぞ。
文化庁解説
著作権法全文(国のやつより読みやすい)
著作権法 | 国内法令 | 著作権データベース | 公益社団法人著作権情報センター CRIC
カネダ国際行政書士事務所